ラック研究会 Lac Study Group

第2回ラック研究会・講演会 「ラックを科学する:その特性とさまざまな利用」

                    

日時:2016年11月3日(木・祝)13:00-17:30 (受付開始12:00)                      
入場無料(定員200名)※事前申込不要。
会場:京都府立大学 教養教育共同化施設 稲盛記念会館1階104号講義室                      

懇親会                      
会場:合同講義棟地下一階 京都府立大学生協食堂
時間:18:00-20:00
参加費:3,500円(飲食代含む) 講演会の受付でお支払いください。
参加をご希望の方は10月15日(土)までにlacstudygroup@gmail.comにご連絡ください。会場の都合により、当日の参加申し込みはお受けできない場合があります。

講演内容

  古代より人類が利用しててきた天然素材のひとつ「ラック」。ラックカイガラムシが分泌した樹脂は接着剤や塗料として、また、虫に含まれる赤い色素は「臙脂」とも呼ばれ、絵画や染色品に用いられてきました。第1回の講演会では、日本に生息しないラックの生産地の状況を中心とした発表をしていただきましたが、第2回は、年代が明らかな世界最古のスティックラック「紫礦」を所蔵することで知られている、正倉院の宝物の一部を目にすることができる年に一度の機会「正倉院展」の開催期間中に開催し(注*)、正倉院宝物とラックの関わりについてお話ししていただくこととなりました。  さらに、1924年にインドラック研究所として設立したインド天然樹脂研究所の所長を昨年6月まで務められた、ランガナタン・ラマニ博士を日本に初めてご招聘し、長年ラックカイガラムシとラックに関わられてきた立場より、ラックカイガラムシの生態と現地での加工についてご説明いただきます。最後に、ラックを加工する企業の立場から、現代日本でのラックの加工と利用についてお話いただきます。古代から現代まで、科学的な視点を通してラックの特性を知り、より明確なラックの未来像、活用方法を様々な分野で描くきっかけとなればと願っております。
*本年度の正倉院展は10月22日(土)から11月7日(月)まで奈良国立博物館で開催されますが、「紫礦」の出陳はありません。

 
第1部:インドのラック (Lac in India)
                 

『Ecology and utilization of lac(ラックの生態と利用)』
Ranganathan Ramani氏(元インド農業研究評議会インド天然樹脂研究所所長、同インド農業生物工学大学前組織長)                    
インドにおけるラックカイガラムシの生態と、ラックの加工と利用について解説する。                  

                
第2部:正倉院のラック (Lac at Shosoin)
                  

『正倉院宝物におけるラックの科学分析』                    
中村 力也 氏(宮内庁正倉院事務所保存課 調査室長)                    
正倉院宝物の素材を科学分析することは、1250年以上経た宝物の今後の末永い保存のためにきわめて重要である。宝物の材質研究を進める中で、ラックを色料として用いた例が見つかってきている。本発表では、奈良時代のラックの色の現状を宝物の画像や科学分析データに基づき考察する。                  

『正倉院宝物とラックの利用』                    
成瀬 正和 氏(元宮内庁正倉院事務所保存課保存課長、東北芸術工科大学客員教授)                    
ラックの利用が示唆されている正倉院宝物をご紹介する。                  

               
 
第3部:現代日本のラック(lac in modern Japan)
                

『天然樹脂セラックの成分研究と産業利用』                    
森 大輔 氏(株式会社岐阜セラツク製造所)                    
セラックの構成成分に関する研究は、古くは1950年代よりインドの研究者を中心に行われてきた。しかし、その多くは、成分を加水分解して構成成分を推定するという手法であった。そこで、我々はセラックを加水分解することなく各成分を単離、一部物性評価を行った。また、その成分研究から生まれたセラック製品について、その産業利用について発表する。                  

 
                

講演者略歴:Profiles of speakers                    
Ranganathan Ramani(ランガナタン・ラマニ)博士
マドラス大学で昆虫学、昆虫生態学を学び、ラーンチー大学で昆虫学博士号を取得。1978年よりインドラック研究所(現・インド農業研究評議会インド天然樹脂研究所)に勤務。ラック生産部門長を経て2010年から2015年6月までインド天然樹脂研究所所長。2012年10月より2016年1月までインド農業研究評議会インド農業生物工学大学組織長を務める。
Dr Ranganathan Ramani
BSc Entomology and MSc Insect Ecology at University of Madras, PhD Entomology at University of Ranchi. Started working at Indian Lac Institute (now ICAR Indian Institute of Natural Resins and Gums) since 1978. Became manager of Lac Producing Division then director from 2010 to June 2015. Head of Indian Institute of Agricultural Biotechnology from October 2012 to January 2016.

中村 力也(なかむら・りきや)博士
2004年3月名古屋大学大学院生命農学研究科博士後期過程修了。博士(農学)。2005年4月より宮内庁正倉院事務所研究員として、正倉院宝物における有機素材の保存・科学分析に従事。
Dr Rikiya Nakamura
PhD Agriculture, Bioagricultural Studies, Graduate School, University of Nagoya at March 2004. Working at Shosoin Office, Imperial Household Agency since April 2005 as a researcher of organic material and scientific analysis of Shosoin treasures.

成瀬 正和(なるせ・まさかず)氏
1976年埼玉大学理工学部化学科卒業、1978年東京藝術大学大学院美術研究科保存科学専攻修了(芸術学修士)1983年宮内庁正倉院事務所入所、2016年3月同所退職。著書「正倉院宝物の素材」(2002)、「正倉院の宝飾鏡」(2009)、他共著、論文多数。
Mr Masakazu Naruse
BSc Chemistry, Department of Science and Engineering, Saitama University (1976) MA Arts and Science, Conservation Science, Tokyo University of Arts. Worked for Shosoin Office, Imperial Household Agency from 1983 to 2016. Publications : "Materials of Shosoin Treasures" (2002), "Jewelry mirrors at Shosoin" (2009) and co-author of various publications and papers.

森 大輔(もり・だいすけ)氏
2004年3月名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程前期課程修了。2004年4月株式会社岐阜セラツク製造所に入社。セラックの化学成分研究、製品開発及び有用天然物の生理活性探索に従事。
Mr Daisuke Mori
MSc Bioagricultural Studies, Graduate School, University of Nagoya on March 2004. Working for Gifu Shellac Manufacturing Co., Ltd since April 2004. Analyzing shellac scientifically, product development and seeking physiological activities useful natural materials.

           
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